キリスト教の教会では、昔から、一年間のカレンダーを、主イエス・キリストのご生涯をめぐることがらを中心に制定してきました。定められる日や期節は、東方正教会やローマ・カトリック教会、またプロテスタントの諸教派などによって、その有無や名前や礼拝のあり方にそれぞれの特色があります。ここでは、日本キリスト教団港南希望教会のこよみを簡単にご紹介してみましょう。
教会では日曜日ごとに礼拝がおこなわれ、そこに集まる私たちは、聖書の言葉を通して神と出会い、それまでの自分の行いを悔い改め、新しく生きる力と喜びを受けて、一週間の始まりとしています。この日曜日を教会のこよみでは、主日 (Lord's Day) または聖日 (the
Holy Day) と呼びます。キリスト以前のユダヤの人々が守っていた安息日 (Sabbath)
に由来するということですが、私たちは、主イエス・キリストが復活されたのが日曜日の朝であったということに、その起源と意味深さを見出します。
主日礼拝では、その日の教会暦の上での意味を色によって象徴させます。この色を典礼色 (liturgical colors) といい、フロンタル(説教壇正面の掛布)やローソクの色などで表します。
【 待降節 Advent
】
12月25日の前にくる4つの日曜日を含む期間のことです。上の表では、ふつうの新年が一番上になっていますが、じつは教会の一年のこよみは、この最初の主日
(Advent Sunday) から始まります。
アドヴェントとは、「到来(やってくる)」という意味のラテン語で、英語にもなっています。これには二重の意味があり、ひとつは主の降誕の日ががやってくる。もう一つは審きと救いとを成就するために、主が再びおいでになる(再臨の主)、ということです。過去においでになった主イエスをいま新しくお迎えすることと、これから来られる主を待望するという、二重の喜びの時なのです。
しかし、待降節の典礼色は悔い改めを意味する紫です。救いの御子の誕生を喜び祝うクリスマスですが、私たちの罪のために十字架におかかりになる主イエスの到来であることを、厳粛な思いで覚えたいものです。
【 降誕日 Christmas 】・【 降誕節 Christmastide
】
12月25日。もちろん、主イエス・キリストのご降誕を記念する日で、この日に最も近い主日に降誕日礼拝を守ります。この日から灰の水曜日までが降誕節です。典礼色は、公現日まで、光、喜び、勝利、純潔を表す白となります。また、24日の夕方(クリスマス・イヴ)に、讃美夕礼拝を行い、讃美歌やクリスマス・キャロルをたっぷり歌います。
歴史家によると、イエスの本当の誕生日はハッキリ分からず、12月25日に祝った最古の記録は、336年の、ローマの行事暦に見られるそうです。冬至を過ぎて、日が長くなり始めるこの時に、闇にうち勝つ主の栄光をたたえ、待ちに待った義の太陽であるキリストのお出でを祝う日となったのでしょう。
同時に、闇におおわれがちなこの世で、クリスマスを祝えずに闇とのたたかいに苦しんでいる人々のことを覚え、祈ることもこの日の大切な課題ではないでしょうか。
【 公現日 Epiphany
】
1月6日。救い主の栄光は、ユダヤ人だけにではなく、人類すべての前に現れたことを祝います。主イエスがベツレヘムにお生まれになったとき、東方の学者達が星の動きに導かれて、その誕生を礼拝しに来た故事にもとづいています。
牧師からの「2001年クリスマスメッセージ」も、ぜひあわせてお読み下さい。
典礼色は白で、この日の次の主日から、自然の恵み、希望と成長を表す緑となります。
【 灰の水曜日 Ash Wednesday 】・【 受難節 Lent
】
復活日から逆に数えて、主日を除いた40日前の水曜日を「灰の水曜日」といいます。主イエスが私たちの罪をあがなうために十字架にかけられた受難の日々を覚え、昔の人々が罪を悲しみ、悔い改めるときに荒縄を身にまとい、灰を頭からかぶったことから、このように呼ばれます。
この日から、復活日の前日までが受難節です。英語の
"Lent" は、"long" と "day"
が合わさった同じ系統の語を源とし、春の日が長くなってゆくことを意味しました。主のご復活までの日々と、近づいてくる春を待つ時期とが、哀しく、美しく重なっているようです。
典礼色は悔い改めを表す紫になり、主のご受難を偲んで、慎み深く、しかし私たちの罪の赦しのためであることを覚え、感謝と喜びをもって日々を過ごし、復活日でクライマックスに達するように歩みます。
【 棕櫚の主日 Palm Sunday 】・【 受難週 Passion Week [聖書対応表]
】
受難節最後の主日と、それに続く1週間。約2000年前のこの日、主イエスは、平和の王、メシア(救い主)として到来されたことを示すため、ロバの子に乗ってエルサレムの町にお入りになりました。人々は棕櫚の葉を振って迎えたので、このように呼ばれます。
しかし、それから1週間のうちに、十字架処刑にいたる、一連の主のご受難が続きます。
【 洗足木曜日 Maundy Thursday
】
受難週の木曜日。主イエスは、十字架の死の前日、エルサレムで12人の弟子たちと過越祭(すぎこしさい)の会食 (最後の晩餐)
をもちます。その席で、主イエスはパンとぶどう酒を通してご自身の死の意味を明らかにされ(聖餐式の制定)、また、弟子たちの足を洗って、主が私たちを愛されるように、私たちも愛し合うようにと示されたのでした。
英語の
"Maundy" は、「掟・いましめ」を意味するラテン語を源としています。もちろん、「互いに愛し合いなさい」という掟です。
【 受難日 Good Friday 】
受難週の金曜日。私たち一人一人の罪を贖(あがな)われるために、主イエスが十字架につけられた苦難を偲ぶ日です。典礼色は紫ですが、この日に礼拝をもつ場合、特殊な厳粛さを表す黒を用いることもあります。
【 復活日 Easter Day 】・【 復活節 Eastertide
】
春分の日の後の最初の満月の後に来る最初の主日。主イエス・キリストの復活を記念する、教会暦でも最古の祝日で、使徒時代にはすでに祝われていたそうです。神の愛の、罪と死に対する勝利、救いの成就と新生の根拠となるこの出来事こそ、キリスト者には最大の喜びです。
聖霊降臨日までを復活節といい、典礼色は、光、喜び、勝利、純潔を表す白となり、ハレルヤの歌声が響きわたります。
ユダヤの過越祭を表すヘブライ語から
"Pascha" とギリシア語では呼ぶのですが、英語の "Easter"
は、古代ゲルマンの春の女神の名に由来するのではないかといわれています。
はじめの頃のキリスト教会では、日取りの制定法について論争が続きましたが、325年の第1回ニカイア公会議でこのように決まりました。年によって変わる主日で、例えば2000年は4月23日でしたが、2008年は3月23日となります。
【 昇天日 Ascension Day
】
復活日後40日目。木曜日です。キリストの昇天を記念する日で、主は父なる神の右に座したと聖書にあります。この日から、天に昇られた主は父なる神とともにいまして、人類の罪をとりなして下さっているのです。
【 聖霊降臨日 Pentecost/Whitsunday
】
復活日後50日目・昇天日後10日で、降誕日、復活日とならんで教会の3大祝日です。もとは、過越祭から50日目(五旬節)にあたるユダヤの収穫祭で、初穂が神に捧げられる日でした。
この日、使徒たちやイエスの母マリアなど、120人ほどの人々が集まっていると、突然、激しい風が吹いてくるような音が聞こえ、炎のような舌が現れて、それぞれの上にとどまりました。すると、一同は聖霊に満たされて、ほかの国々の言葉も話せるようになり、各国語で神の御業の偉大さを語り始めました。
アウグスティヌスがこの日を「教会の誕生日」と呼んだように、この時、人間のあいだで御言葉が語られて、新たな真の神の民が、すなわち教会が誕生したのです。同時にこの日は、神の国が成就する終末の日の始まりでもあります。私たちの港南希望教会も、この日が創立記念日です。
典礼色は、聖霊の炎を表す赤で、私たちの教会では、リボンやネクタイなど何か赤いものを身につけるようにします。なお、聖霊降臨日からアドヴェントまでを聖霊降臨節と呼び(英語では "Ordinary Time"
と呼ぶ教会が多いようです)、この間の典礼色は、三位一体主日の白と終末主日の紫を除いて、再び自然の恵み、希望と成長を表す緑となります。
【 三位一体主日 Trinity Sunday
】
聖霊降臨節第2主日。父であり、子であり、聖霊である神が一体であるという教会の信仰を特に記念する日です。主イエス・キリストは復活の後この世を去り、天にあげられ、父なる神と共に聖霊をこの世にお遣わし下さっています。私たちの信仰も、教会も、このようなお計らいによって、よろこばしく成長してゆけるのです。
この日の典礼色は、光、喜び、勝利、純潔を表す白です。
【
参考文献 】
日本キリスト教団港南希望教会「週報」。
『キリスト教大辞典』教文館、1963年。
Days of the Lord:
The Liturgical Year. 7 vols. Collegeville, MN: Liturgical Press, 1994.
The Christian Resource
Institute. Online, <http://www.cresourcei.org/>. 2001.
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